「千里!」 「そげに喜ばれても反応に困るばい」 笑顔で近寄った私を千里は頭を一撫でして隣に座った。真っ暗になった公園の空に光る粒を指差した。 「見て、あそこ!星が綺麗でしょ?」 「あー…、。あれは星じゃなかね。飛行機ったい」 「嘘あれ星だよ」 「星はあんな速くなか」 「はあ千里嘘ば吐いたら駄目だよ」 千里に向かって呆れた顔をすると軽く頭をはたかれた。話を誤魔化したって、バレてるんだろう。千里が本題に戻した。 「それよりまた勝手に外出て来とっていい加減にせんね、風邪引くっちゃろ。」 寒さが肌に突き刺さる。千里が私のパーカーを被せてくれた。 「あーもうワケわからない方言使わないで」 本当は千里の言いたいことなんかわかってるけれど、分からない振りをしたい。千里が家に帰れって言っても帰らない。お母さんもお父さんも誰も居ないような家に居たってつまらない。 「」 きっと私の想っていることなんか分かっている千里がまた頭をはたいた。 「分かっとるよ。千里お母さんみたい」 馴染みのある方言がほんの少し混ざった私の言葉に千里が笑った。 「。」 立ち上がって千里の差し出す手を握った。 「今日は泊まっていかんと?」 「また泊まってらって馬鹿にされるけえ、いらん。」 「ホームシックも扱いが難しかー!」 笑った千里におもいっきり頭を当てた。公園からゆっくり歩く千里の隣をわざと大股で歩いた。熊本から出てくるときもこうして並んだっけと思い出す。 「。」何度も呼んでくれる名前が心地よかった。 「千里ー。また家出したら探しに来てくれる?」 「世界中のどこにおっても見つけちゃる、覚悟せんね」 千里が大きな手を握って、影が2つ夜の中を越えて行く。 2012.2.13 |