「何してるんですか先輩。」

「日吉を待ってるに決まってるじゃん!」



へへっとバカみたいに顔を崩して先輩が笑う。部活が終わってから少し自主練をしたいと跡部さんに言うとコートをあけてもらえた。先輩は跡部さんたちと一緒に帰ったはずなのに、ここに残っているわけだ。時間を気にせず打っていたから、一時間は経っていたと思う。何のつもりなんだ。



「別に待てとは言ってません。」

「言われてませーん。私が待っただけですー。」俺がすたすたと歩き出すと後ろからついて来た。

「っくしゅ!」

ほら見ろ。だから嫌なんだ。差し出したというよりは、押し付けたに近いような、そんな上着を受け取るとへにゃり、とまた笑う。




「ありがと。」

先輩に風邪を引かれて俺が跡部さんに怒られるのが嫌なだけです。」

「それでもいいよ、ありがと。」



先輩のことを一番に考えているのはきっと、今日も明日も俺だ。ずっとそうだったし、これからもずっとそうだ。言わなくてはいけない。言えなくなる前に、会えなくなる前に。


「日吉とももうさよならだから、少し話そうかなーって思って待ってた!」

「俺はありませんけど。」

「まあまあ!聞きたまえよ!」

「じゃあ俺の話聞くんですか。」

「え!?話無いって言ったじゃん!」

「出来ました。」

「出来るものなの!?」

「言おうか迷ってただけですからね。」

「何なに?気になるな!」

「・・・やっぱりやめておきます。」

「どっち!?」

ころころと変わる表情を見るのは、楽しいと思う。気付いたら目で追っている俺も俺だが、その度に期待させる先輩も先輩だ。望みは薄いのは分かっている。それでもこのまま終わらせてしまうよりは、よっぽど良いはずだから。




先輩。」


「ん?」



「好きです。」

今日も明日もこれから先も、きっと俺があんたを1番大切に想ってる。










2012.3.22
梨緒さんリクエスト。いつもお世話になってます!