「ただいま 精市。」
マンションの扉を開けて、パンプスを脱いで揃える。
歩き疲れた足を、どうにか動かしてよろよろとリビングに辿り着く。
「精市ー?さんが帰ってきましたよーぅ。」
整頓されたリビングを見回しても姿が見当たらず、ぺちぺち足音を
立てながら探し回る。
テーブルの下、ソファー。キッチン。寝室のドアを開けると、
ベットの上で眠る精市を見つけて顔が綻ぶ。
「みっけ、」
起こさないように忍び足で近付きながら、自分もベットにもたれかかる。
ベッドに倒れ込んで寝息を立てている恋人を眺めて、毛布をかける。
いつもは疲れを見せない寝顔がとても可愛らしく思えて、くすり、と笑う。
「今日もお疲れ様です、」
ふふ、と笑みが零れる。そういえば、精市の寝顔レアだ、と呟きながら
携帯で写真を撮る。
「おぉう、我ながら良い出来だよこれは!」
「・・・・・・・、何撮ってるの、」
うっすら目を明けて、未だ眠そうな精市の顔をつつきながら答える。
「何って...精市の寝顔だよ。」
そういうのは堂々と言わないんだよ、と少し呆れ気味に精市が言う。
「ねえ、精市。」
「・・・・んー?」
少しだけ頭を上げて大きな手で私の頭を撫でる。
「なんでもない。」
くす、と笑って精市の首元に顔をうずめる。
「変な。」
もたれかかった私を精市が両手でそっと抱きしめる。
「精市、頑張りすぎは良くないよ。」
「そういうだって頑張りすぎじゃない?」
二人で寝転がったまま、話を続ける。
「第一、彼女くらい養えないと男として、」
「あら、病弱だった方がそんなこといえるようになったのね。」
「失礼だなあ、」
ふふっ、二人で笑い合う。
少しの間を置いて、精市が起き上がる。それに合わせて私も上半身を起こす。
精市が改まってベットの上に正座をするから、私もつられて正座をする。
私の手を握って、おもむろに口を開いた。
「。俺と結婚しよう。」
すごくいきなりで、吃驚したけれど、私は微笑んで精市にキスをした。
カランコエの花束
(筋書きとか、タイミングとか順序なんて考えられなかった。)