ふあ、と欠伸をした。目尻から染みだすみたいに涙が出て、右手でそれを拭った。 眠いん?と聞きながらが透明な袋を差し出す。プリクラが何枚か入ってる袋。 と昨日撮ったんで、あたしとがピースしてる。 「昨日、めっちゃ元気やったしな」 「楽しかったもん」 「やっぱあのブーツ欲しかったなぁ」 「買えば良かったのに」 「財布に優しくない値段や、あれは」 廊下の窓を挟んでと話す。ガタッって音がして、振り向いたら忍足がおった。 「おはよう」 「おはよう」 まだ眠たそうな顔でにかっと笑った。 「、何なんそれ?」 忍足が近寄ってきて、あたしの手元を覗き込んだ。つん、とあたしの肩を指で押して が1組に走っていく。眠たい頭も隣にある金髪のせいでぱっちり覚醒してもうたし、 手元は少しずつ震えてきとる。 いややなあ、こんな小学生みたいな奴に頭のなか占領されたなんて、あり得へん。 「これこないだ撮ったん?」 「うん、そうやで」 「へえ、やっぱりかわええな!」 あたかもフツーに言う忍足の笑顔があたしの中では一番眩しくて、一番大好きな 笑顔やった。それだけ言うてまたどっか行った背中に指先で魔法をかけて、袋を 鞄にしまった。 忍足があたしのことを好きになってくれますように。 なんて、どうも難しい魔法をかけたと自分でも思う。 2012.1.3 |