『も、しもし、幸村くんですか?』


「電話遅いよ、。」


ちょっと怒ったみたいに告げる。本当のところは全く怒ってないんだけど。
だって、幸村くんが、と受話器の向こうでが小さな声でもごもご言う。
きっと俺から電話しなかったことを言っているんだろう。
はすごく恥ずかしがり屋さんだから。



委員会の話なんて託けて電話するって言ったけど。
本当は声が聴きたかっただけじゃないのか、俺。とかも思ったりして。



「だって俺の携帯だよ?俺以外出ないよ。」


『わわわ、分かってるけど、でもほらもし


「そんなんじゃ、柳に電話なんて死んでも無理だね。」


『だだどえうえおわあわわわ!!!!』


「訳分からないよ。」





は分かりやすい。柳の名前を出すとすぐこれだ。
どもってあせって、へんな言葉を発する。


「柳のことをさりげなく(でも顔真っ赤)聞いてきたり、
話しかけられると、これでもかってくらいデレデレしたり。とかそのほかいろいろ。
エトセトラ、エトセトラ。以上がのとてもよく分かりやすい点。」

ありのままを伝えると、はひどく驚いたみたいだった。



『うっそ、そんな私って分かりやすい?!』


「まあね。」




嘘だよ。俺だからわかるんだ。
本当はが分かりやすいとかじゃなくて、俺がをよく分かってるだけ。
だって、俺の、俺の幼馴染のくせに。





・・・・・が俺を好きならいいのに。


もしここで、に好きだといえばどうなるんだろう。





そんなこと死んでも言わないけど。





心地良い関係が崩れるのが嫌だから。


誰よりも、が好きだから。


だってそうだろう。
柳に好きなんていえない。






グダグダくだらない話を続けて電話を切る。
窓の外に浮かぶ月が泣きたくなる位に綺麗だった。








それでいい。そのままでいい。
まだ俺はこの関係を壊したくはないんだ。



ただそれだけを思い、携帯を閉じた。






無限ループ






いつかは僕が壊してあげよう。