分かってる。


彼が私の手が届くような存在じゃないことぐらい。
諦められるなら諦めたい。顔を見る度に、微かな想いは音をたてて大きくなっていく。



ほら、君はきっと知らないでしょ?
そうやって何も知らないまま、また私の名前を呼ぶんだから。







「どうしたの白石」


「見つけたから声掛けただけ」


「何それ」



君の笑顔がすごく辛い。いつだって言いたくさせてしまうのだから。
好き、って言いたくなる。



「なんか今日元気ないな」

「そう?超元気だけど。」

「嘘はあかんな。」


私の頬に指をさす。やめてよ、触らないで。

どうしてこうも無神経なの?
温かくなった頬に触れる指を握りしめて離した。


は何を怒ってるん?」

「やめてよ。」

「分かった素振りも、そうやって私を気遣う振りも。」

強く握りしめた手の痛みが心のそれに比例する。



「私が、っ!どれだけ白石を、好きだったか、わかるっ、?」


ぽろぽろと溢れ落ちる滴が制服の色を変えていく。




「……優しくしないで、」

、俺は、」

「やめてよ、っ のことが好きなんでしょ、」

は、の」

「親友だよ。大好きだった人を諦めるぐらい、」

「……、」

のことが好きなら、
 もう私の気持ちを揺るがすようなことはしないで」



流れ出る生暖かい滴を制服の袖でごしごし拭った。





っ、」





背中に掛かる声に振り返らずに走った。心をどこかに落としたままで。













2011.12.31