破滅だ。やってしまった。


これが参謀に見つかったら私は確実に皇帝に差し出されてしまう。
皇帝はきっと容赦なしに怒鳴り付けるだろう。



破滅だ。



どうしたものかとコーヒーをぶちまけた資料を前に考える。
盛大にぶちまけられているのだからどうしようもない。
資料は明後日、生徒会会議で使うものだと云うのに。


参謀が資料をまとめておけと言うからテスト終わりで
徹夜後の頭を覚まそうとコーヒーを淹れたら引っ掛けてこれだ。



第一副会長である私に参謀が命令をするだなんて。



いや、別に副会長というポジションを鼻にかけている訳じゃないけども
参謀は私への接し方がひどくひどい。今日だって、




、まとめろ。




それだけ言ってドーンとものすごい量の束を私の机に置いて参謀は部活に行った。


参謀への愚痴を言う前にまずこのコーヒーまみれのプリントを
どうにかしなければならない。まだぶちまけたのが二部で済んだのが幸いだ。


「とりあえずコピー、が先かな」


無事なプリントをコピー機にかける。ピッと電子画面をタッチして二部コピーする。
新しくコーヒーを淹れたカップをプリントから離れたところに置く。
少しすするとコーヒーの甘さが舌に伝わった。
皇帝の説教に比べると随分甘いものに感じられる。



皇帝は怒ると面倒だから私は苦手だ。
参謀はそれをよく理解しているから何か失態をすると
いつも皇帝の元へ連れて行く。お陰で全校生徒に風紀委員長に頭が上がらない
副会長として有名だ。



「へえ、ちゃんと終わらせたのか」

「参謀…!」


「コーヒーをこぼして二部コピーした確率100%」

「絶対見てたよね」ふっと笑うとこちらに向かって歩いてくる。

「皇帝は勘弁…!」

「あとどれだけだ」

「はい?」

「あとどれくらいかかる?」

「2、30分か、それぐらい…」

「手伝おう」

「え?」

「手伝ってやると言っている。早く終わらせて帰るぞ」

「ぅえ」

「一緒に帰ってやるとするか。」
参謀の意外な一言に驚愕する。

鬼のような参謀が私の作業を手伝っていると考えると
あり得ない気がして逆に作業が進まなくなった。


「参謀、何考えてる?」

「うちの困った副会長のことだ」

「今日の参謀はやっぱりおかしい」

「俺のことを誤解しているだがな。」






2011.10.1