朝起きるとなんとなく身体がだるかった。眠気がとれないけど無理矢理体を布団から引き剥がして、 ノロノロとキッチンに向かう。コップに水を入れて少しずつ口に含むと、多少は目が覚めたような気がした。 「もう起きたん?」光が頭をわしゃわしゃ掻きながら隣に立つ。 「うん。でもすっごく眠い。」 「、今日土曜やで。講義ない日やろ?」 「あ、そっか!」 「…俺、もっかい寝るわ。」ベッドに引き返そうとする光の手を掴んで二度寝を阻止する。 私だって眠いけど、せっかくの休みなんだから光と遊びたいし、一日を寝て終わるなんて勿体ないからね! 「…分かった。どこ行きたいん?」 「家。」 「もうおるやん」 「ちっがぁあう!家は家でも寝るのは嫌だ」 「ほな、どこ行くん?」 「どっか。」 「家ちゃうん」 「だって家なら光寝るもん」光が当たり前だって顔をして私を見つめる。 私も見つめ返す。5秒くらいでふっと光が目を逸らした。 「…行くで、どっか」 「やった♪」 急いでお気に入りのワンピースを着替えて、バッグを持つ。 寝起きでゆっくりの光が着替え終わるのをパンプスを履いて待つ。 「行こ、光」 「おん」 玄関のドアを開けようとした時、インターホンがなった。 はいと答えるまでもなくドアが勢いよく開けられる。 「財前おるかー!!」ドアの先に買い物袋を提げた人が3人立っていた。 光の顔が見るから不機嫌そうになる。せ、ん、ぱ、いと、口が動いた。 「え、お前、彼女か、彼女か!」 「謙也、俺ら邪魔したんちゃうか」 「むぞらしか」 「千歳聞いて」 「来るなら連絡してくるんちゃいます普通は」目前でマシンガンみたいに会話が繰り広げられる。 「今家出るんすわ」 「えー、デート?」 「ほらな、邪魔やろ」 「ほんまやな、せっかく財前とお好み焼きしようと思ってんけど」 「邪魔は悪か」若干一名が拗ねてる気がする。いや、先輩3人が寂しそうだ。 せっかく光に会いに来たのに、帰すなんて悪いなあ・・。 光のこともきっと知ってるんだろうし、私の知らない光を知るチャンスかも! 「お好み焼きか、してみたいですね」 「何言うてんの。」 「ちゃんって言うんか、気にせんでええねんで!」 「謙也さんが邪魔なんすわ」 「悪いな財前!」「嘘つけ。」 「…あの、玄関で話すのもあれですし、どうぞ中で。」 一番背が高いひとの荷物を持って中に入る。光も引っ張ってリビングに連れていくと、後ろから先輩さんも入った。 「ええん、どっこも行かんで?」 「うん。いつでも出かけられるよ、でも先輩から光の中学生の話は今日しか聞けないもん。」 「そういう魂胆か、こら。」 先輩の名前を聞くと、一番背が高い人が千歳さん、包帯をつけた人が白石さん、 光が邪険に扱ってるのが忍足さん。光と私を加えた5人で、お好み焼きを作ることにした。 実質、白石さんが作ってるけど。手伝おうとすると怒られるから白石さん流を邪魔しないように待つ。その間に、千歳さんと忍足さんと光とトランプをした。千歳さんが異様に強くて、 忍足さんが悔しくてじたばた暴れて光が鬱陶しがっていた。 キッチンで格闘する人に、ババ抜きと神経衰弱にムキになっちゃうような人達に囲まれて光の学生時代はきっと楽しい毎日だったんだろうなって思う。 あの性格だから、口には出さないと思うけど。 ☆ 「ほな、俺ら帰るわ」 「楽しかったわ!」 「また来るばい」 「来んでええっちゅうねん」 一気に嵐が去ったみたいに静かになった部屋に、光のため息がこぼれた。 「ほんま、いつ会っても疲れるわ」 「でもすごくいい人達だね」 「まあ、悪い人ではないわ。」珍しい光の本音に、言葉が出なかった。 また沈黙が流れた時には私は笑ってしまって。 「あはははっ!」 「なんやねん!」笑いが止まることなく込み上げてくる。 「あはははっ」 「お前…!」 光にぎゅうっと抱きしめられた。 「……笑った罰や」 「?」 「離さへんで」そのまま全力でくすぐられる。 「わ、ちょっと!光!あははは!!あはははは」 「…、すきやで」 「私もすきだよ!光って急に話変えるね。」 「・・・・・やっぱり許さへん!」 「勘弁し、あははははは!!」 ____________________ (後日・電話にて) 「何なんですか謙也さん」 『おー、財前!このまえはありがとうってちゃんに言うといて!』 「ええですよ別に。も楽しい言うてましたし。」 『お前ええ彼女もったなあ』 「当たり前っすわ。」 『別れるんなら言うてや!俺が代わりに幸せにするわ。』 「死んでください」 『せやけどお前、ほんまに大事にしろやー』 「謙也さんは彼女の一人でも早よ見つけたらどうですか」 『俺、フリーになったらちゃんを幸せにするわ』 「死んでください(プツッ」 「冗談のつもりやねんけどな・・・・」 「謙也の冗談は冗談に聞こえんばい」 「右に同じ、や」 2011,8,4 |